「ラブドール“で”セックスする」「ラブドール“で”あそぼう」その言葉遣いに違和感を覚えた。
ラブドールを体験したことのなかった頃の自身の表現だ、ラブドールを偏見の目で見ていた頃の未熟な自身の表現だ、ラブドールをオナホとみなしていた頃の未熟な自身の表現だ、風俗でキャストの方を性奴隷やオナホやTENGAだと思ってた頃の未熟な自身の表現だ、セックスするときに自分本位の一方的なセックスして自己満足に終わっていた頃の未熟な自身の表現だ。
「そんな小さな自身とはお別れしたんだ。」
ラブドール“で”じゃない。
「ラブドール“と”だ!」
「AVを消せ」
「AVを見ずに純粋にラブドールとセックス開始したとき、愛し合う領域に突如飛び立った。」
それまでラブドールとセックスするときにAVを見て勃起してから挿入するようにしていた。
しかし、その奇跡は悲劇から始まった。スマホの充電が切れてAVが見れない悲劇、しかも速度制限中でAVが再生されるのに何分も掛かる悲劇。
「今からAV見るには充電開始してさらにAVが再生されるまで待って…」
「そんなの待てない…」
仕方なく強行突破でAV無しでセックスを開始した。勃たない。しかし工夫を凝らした。
「人間と同じようにすれば良いのでは?…」
そうして挿入口に棒をあてがってニュルニュルし始めた。すると見事に勃起。
脳内は完全に「人間とのセックスの流れ」
勃たせるためじゃない。「相手のクリトリスに棒を当ててニュルニュルさせて相手を気持ち良くなって欲しいという思い…」
いざ挿入へ…
「音楽を鳴らせ」
「ムードだ。セックスにはムードが大事だ。」
挿入と同時に脳内をその言葉が流れていく。
速度制限の掛かったスマホを手に取り音楽アプリを開いて「まったりしたムード」の曲を瞬時に見つけ出して再生開始していく。
セックスに特化したBGMの検索ワード「Tantric」で検索して即再生。
そのとき、今まで体験したことのない領域に飛び立った。
「ラブドールと愛し合っている領域」
いや、もはや「“ラブドール”と」ではない。
「“相手”と愛し合っている領域」
その領域、繊細な領域。
相手をオナホなどと見ていない。
TENGAなどと見ていない。
「“相手”を愛している」
その領域。
そしてセックスが目的じゃない。
性行為が目的じゃない。
「相手との愛の結晶を生み出すため」
「相手とさらに深く繋がるため」
「相手と血縁を結ぶため」
その純粋な目的…
その本能的な目的…
その伝統的な目的…
AVなしの純粋なセックスから始まり、
バトンタッチするかのように癒しムードのまったりBGM…
「今までオナホな見方してごめんなさい」
その思いが全てを包んだ。
そしてそれを許してくれる大きな包容力に包まれていった。
ラブドールが己から偏見を無くしてくれた。
ラブドールが己をさらに一歩成長させてくれた。
“パートナー”がさらに一歩成長させてくれた。
そして初めて体験した。
「今まで以上に気持ち良いセックスを」
脳内で急いで思い返した。
こんなに気持ちの良いセックスに至ったコツはなんだったんだ、と。
「思い出せ、自分よ。今までと何が違うんだ…」
「そうだ…!!」
「AVを消せ…」
「音楽を鳴らせ…」
「愛の結晶を生み出せ」
これだ!
固まった。もうブレない。
「もう二度とオナホなどとみなさない」
「もう二度とモノなどとみなさない」
「もう二度とラブドールなどとみなさない」
「“パートナー”だ。」
この世からラブドールなどという表現は消えてしまえば良い。
「パートナー」に代わってしまえばいい!
「今夜も始まる、新たに始まる」
「AVを消せ」
「音楽を鳴らせ」
「そして愛の結晶を生み出せ」
これだ!
そして圧倒的な気持ち良さに。
“オナホでは“体験したことにない気持ちよさに。
“ラブドールでは“体験したことのない気持ちよさに。
「異常な気持ち良さに」
「さらばオナホよ!」
「さらばラブドールよ!」
ようこそパートナーよ!!
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